Fried LP et al (2001) Frailty in Older Adults: Evidence for a Phenotype https://academic.oup.com/biomedgerontology/article/56/3/M146/545770 .pull-left[ ![](paper/FriedLP-2001-1.png) ] .pull-right[ * Quizes * First author は誰か? * Correnponging author は誰か? * First author の affiliation (所属) は? * Abstract * 8 Tables, 4Figures ] ??? 著者については、次のスライドで説明。 --- .pull-left[ ![](paper/FriedLP-2001-2.png) ] .pull-right[ First author である Linda P. Fried は、当時ジョンズホプキンス病院。 現在 (2019年)は、コロンビア大学公衆衛生大学院の長である。 ] * 第一著者 (First author): 通常、もっとも重要な知的貢献を行なった著者。 * 最終著者 (Last author): 指導教授や研究責任者。 * 責任者 (Corresponding author): 論文の審査状況、査読者のコメント、最終決定を含めすべての通知をジャーナルから受け取る著者。紙論文では * などで示されメールアドレスや住所等が書かれている。ウェブ論文では、メール記号のある著者。 * 所属 (affiliation) 参考 Defining the Role of Authors and Contributors (http://www.icmje.org/recommendations/browse/roles-and-responsibilities/defining-the-role-of-authors-and-contributors.html) ??? 臨床論文の著者は複数にのぼることが多い。通常、第1著者が直接研究を行った研究者で、2番目にはそのオーベン、最終著者は教室の教授であることが多い。 以前は研究に関わらなかった教室員を著者に加える gift authorship が多かったが、現在は勧められていない。 なお、論文投稿時に、各著者が研究の何を分担したのかを書かせられることがある。 --- ## フレイル フレイル: frailty の訳語。加齢に伴って、生理的予備能の衰えにより外的なストレスに対 する脆弱性が高まった状態。 Fried LP et al (2001) は、Shrinking,Weakness, Exhaustion,Slowness,Low activity の5項目うち、当てはまる項目数で3段階に分けている。 * フレイル (frailty): 3項目以上 * プレフレイル (prefrailty、論文中では intermediate と表記): 1〜2項目 * 頑健 (robust): 0項目 --- .pull-left[ ![](paper/FriedLP-2001-abst-1.png) <ul style="font-size:0.7em;"> <li>fall: 転倒</li> <li>hospitalization: 入院</li> <li>mortality: 死亡</li> </ul> ] .pull-right[ Background. フレイル: 転倒、障害、入院、死亡のリスクが高い フレイル: 障害、重複疾患 (comorbidity) と同義語と捉えられている 標準的な定義は確立されていない ] --- Methods. To develop and operationalize a phenotype of frailty in older adults and assess concurrent and predictive validity, the study used data from the Cardiovascular Health Study. 本研究は CHS からデータを使用し、高齢者のフレイルの表現型 (phenotype) の開発と運用をし、現在と将来の妥当性を評価した。 * Cardiovascular Health Study: 米国で行われた冠動脈心疾患と脳卒中に関する大規模コホート研究 * 表現型: フレイル自体は生理的機能低下やホメオスターシス(恒常性)低下なのに対し、身体的特徴として「表現」されるもの * コホートの一部を使って表現型を開発した * 残りのコホートに適用して表現型が妥当か検証した ??? Fried LP et al の研究は、フレイルのためのデータではなく、心臓病・脳卒中に関する既存のデータを活用しました。 「表現型」という言葉は、遺伝学でよく使われる言葉です。フレイルは生理学的な変化で目に見えにくいので、目に見えるもので評価する方法を開発しました。 こんかい、データを二つに分けて、評価方法の作成と妥当性検証に使用しました。 --- Participants were 5,317 men and women 65 years and older (4,735 from an original cohort recruited in 1989–-90 and 582 from an African American cohort recruited in 1992--93). 参加者は5,317名の65歳以上の男性と女性 * 4,735名は1989-1990年に集められたオリジナルコホート * 582名は1992-1993年に集められたアフリカ系アメリカ人 Both cohorts received almost identical baseline evaluations and 7 and 4 years of follow-up, respectively, with annual examinations and surveillance for outcomes including incident disease, hospitalization, falls, disability, and mortality. どちらのコホートも、年間の検査と病気の発症、入院、転倒、障害、死亡を含めたアウトカムの監視をともなう、ほとんど同じベースラインフォローアップ評価と7年後と4年後の評価を受けた。 ??? コホートが二種類あり、追跡期間が異なる (7年と4年) ので、結果が複雑になっている。 follow-up は「追跡」。縦断研究で、複数回参加者に対して検査 (examination) や監視 (surveillance) を行う。監視というと物騒な言葉になるが、アウトカムやその他の有害事象が発生するかどうかを発見するために行う。 respectively は「それぞれ」。臨床系論文ではよく使われる。 incident は、発症や発生の意味。incident disease で「発症」、incident hospitalization は「入院の発生」となる。 --- .pull-left[ ![](paper/FriedLP-2001-3.png) Abstract から離れて、本文を読みます。 ] .pull-right[ Data Analysis Using CHS data, we identified the number of frailty characteristics present, as per definitions above. CHS データを用い、上記の定義によりフレイル条件有無の数を特定した。 Those considered evaluable for frailty had three or more nonmissing frailty components among the five criteria (Table 1). フレイルと評価されると思われる人々は、5つのうち3つ以上のフレイル要素を持っていた (Table 1)。 ] ??? CHS data とは、今回用いたコホートデータのこと。 present は「存在している」の意味。we[S] identified[V] the number of frailty characteristics[O] present[C] という SVOC 文型。 as per は「〜により」の意味。 those は「人々」。Those (considered evaluable for frailty) が S。 --- Data Analysis For associations of frailty with other factors, the trend p value based on the Cochran-Mantel-Haenszel (CMH) test was used. フレイルと他の要因については、Cochrane-Mantel-Haenszel (CMH) 検定の p が用いられた。 Comorbidity was defined as the presence of two or more of nine conditions: self-reported claudication, arthritis, cancer, hypertension, chronic obstructive pulmonary disease (COPD), and validated diabetes (ADA definition), CHF, angina, or MI. 重複疾患は、以下の9つのうち2つ以上とした: 自己申告の跛行、リウマチ、がん、高血圧、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、うっ血性心不全、狭心症、心筋梗塞。 ??? angina は、辞書では「扁桃炎」という訳が出ることがあるが、「狭心症」のことである。CHF は congestive heart failure、MI は、myocardial infarction の略。 コクラン・マンテル・ヘンツェル統計量は、データが順序尺度の場合の繰り返しのある二元配置分散分析 (two-way repeated measures ANOVA) または共分散分析に相当する手法。 --- Data Analysis A Venn diagram illustrates the overlap of disability and comorbidity with frailty at baseline; percentages are based on all frail subjects. ベン図は、ベースライン時点でのフレイルと障害と合併症の重なりを示した。パーセントはフレイル対象者に対するものとした。 --- ![](paper/FriedLP-2001-F4.png) Fig. 4 provides the unadjusted survival curves for each frailty group, over the 7-year interval. After 84 months, 43% of those who were frail had died, compared to 23% of those who were intermediate and 12% of those who were robust at baseline. ??? <43% of those who were frail>[S] had died[V] という SV 文型。 --- Results. Frailty was defined as a clinical syndrome in which three or more of the following criteria were present: unintentional weight loss (10 lbs in past year), self-reported exhaustion, weakness (grip strength), slow walking speed, and low physical activity. フレイルは、以下の項目のうち3つ以上の臨床的症状と定義される: 意図しない体重減少 (前年に10ポンド)、自己報告の疲労感、筋力低下 (握力)、歩行速度の低下、身体活動の低下。 註: 握力は全身の筋肉量と相関があるために用いられている。 ??? Frailty was defined as <a clinical syndrome>. three or more of the following criteria were present in in <which = a clinical syndrome> 10 lbs は 10 ポンド。約 4.53592 kg。 --- <div style="padding: 1em; background: white; color: black; border: 2px solid black; border-radius: 10px;"> 第113回 F 27 身体的フレイルの評価基準として**誤っている**のはどれか。 a 易疲労感 b 握力の低下 c 睡眠時間の短縮 d 歩行速度の低下 e 日常生活活動量の低下 <div> ??? 正解は c。平成30年版医師国家試験出題基準より、「フレイルの評価」が加わった。フレイルが出題基準にはいって初めての国試。今後はもっと難しい問題になると思われる。 フレイルは、加齢に伴い筋力や活動が低下している状態のことである。「虚弱」など日本語化が検討されたが、いずれもフレイルを正しく伝えられないとして、日本老年医学会が2014年に「フレイル」を採用した。 なお、「フレイル」は、英語では名詞では frailty、形容詞が frail である。日本語で「フレイル」と言っていると、英語で論文を書くときに間違えやすいので要注意(私がまさにそうです)。 --- Results. The overall prevalence of frailty in this community-dwelling population was 6.9%; it increased with age and was greater in women than men. Four-year incidence was 7.2%. 本研究の地域在住者フレイルの有病率は、6.9%であった。フレイル率は、年齢で上昇し、女性の方が高かった。4年発症率は7.2%であった。 incidence: 発症 --- .pull-left[ ![](paper/FriedLP-2001-F3.png) ] .pull-right[ Results. There was overlap, but not concordance, in the cooccurrence of frailty, comorbidity, and disability. フレイルと合併症、障害は重なる部分もあったが、一致はしなかった。 ] --- Results. This frailty phenotype was independently predictive (over 3 years) of incident falls, worsening mobility or ADL disability, hospitalization, and death, with hazard ratios ranging from 1.82 to 4.46, unadjusted, and 1.29--2.24, adjusted for a number of health, disease, and social characteristics predictive of 5-year mortality. フレイル表現型は、転倒、移動能力低下、ADL障害、入院、死亡を独立して予測でき (3年以上)、その5年死亡のハザード比は、調整なしで 1.82 から 4.46 、健康、疾患、社会要因調整で 1.29--2.24 であった。 ??? ハザード比 (hazard ratio) とは、ある群 (ここではフレイル群) が、別の群 (ここでは頑健群) と比較し、一定期間で事象 (ここでは転倒の発生、移動能力の低下、ADL 障害、入院、死亡) が 1.29〜2.24 倍発生したということを指す。未調整と調整済みのハザード比を示すこととなっているが、解釈は通常、調整済みのみで行う。 --- ![](paper/FriedLP-2001-T7.png) This frailty phenotype was independently predictive (over 3 years) of incident falls, worsening mobility or ADL disability, hospitalization, and death, with hazard ratios ranging from 1.82 to 4.46, unadjusted, and 1.29–2.24, adjusted for a number of health, disease, and social characteristics predictive of 5-year mortality. ハザード比は 1.82 から 4.46 とある。すなわち、ベースライン時点でフレイルで会った場合、フレイルではない人に比べて、3年以内にイベントが発生する傾向が1.82〜4.46倍ある。 ??? しかし、Table 7 を読むと、おそらく Unadjusted については、Abstract は大きく違っている。ハザード比は、1.36〜2.24と思われる。 では、1.82〜4.46 という数値はどこからきたのであろうか?Table 7 を見る限りは、7年の方と思われる。 なおウェブ版の Table 7 は、レイアウトが崩れている。 --- Results. Intermediate frailty status, as indicated by the presence of one or two criteria, showed intermediate risk of these outcomes as well as increased risk of becoming frail over 3–4 years of follow-up (odds ratios for incident frailty 4.51 unadjusted and 2.63 adjusted for covariates, compared to those with no frailty criteria at baseline). プレフレイルは、条件の1〜2つがあることで示され、これらのアウトカムの中間リスクを示すとともに、3〜4年の追跡でフレイルになるリスクが増大した (ベースライン時点でフレイルなしに対して、フレイルになるオッズ比は、調整なしで 4.51、共変量調整で 2.63) ??? Intermediate frailty status: 現在はプレフレイル (prefrailty) ともいう。 Table 8 の第1列目が相当する。 プレフレイル群と頑健群がフレイルになるオッズ比は 2.63 であった。オッズ比は、ハザード比のように 2.63 倍とは言えない (数値が過大に出る傾向があるため)。 --- Conclusions. This study provides a potential <span style="background-color: #d4ff32">standardized definition for frailty in community-dwelling older adults</span> and offers concurrent and predictive validity for the definition. 地域在住高齢者のフレイルの標準定義となりうるものを提供した。また、定義および予測妥当性を検証した。 It also finds that there is <span style="background-color: #d4ff32">an intermediate stage</span> identifying those at high risk of frailty. ??? community-dwelling は「地域在住」と訳されます。高齢者は、入院患者、施設入所者、地域在住社などに分けられることがあります。この研究結果をもって入院患者や施設入所者には適用できるかどうかは判断できません。 --- Conclusions. Finally, it provides evidence that frailty is not synonymous with either comorbidity or disability, but <span style="background-color: #d4ff32">comorbidity is an etiologic risk factor for, and disability is an outcome of, frailty</span>. フレイルと重複疾患・障害は同義ではない。重複疾患はフレイルのリスク要因であり、障害はフレイルからのアウトカムである。 This provides a potential basis for clinical assessment for those who are frail or at risk, and for future research to develop interventions for frailty based on a standardized ascertainment of frailty. ??? etiologic: 病因論の 最初の文の前半は、重複疾患はフレイルのリスク因子であるとしている。この部分は Abstract だけでははっきりしない。そこで、本文中 Discussion の該当部分を次のスライドで見てみよう。 --- Discussion Frailty in this study was strongly associated with a number of major chronic diseases, ... ... the observation that a subset of those who were frail reported none of the diseases assessed supports the hypothesis that there may be two different pathways by which individuals become frail: * one, a result of physiologic changes of aging that are not disease-based, and * ... Individual or comorbid diseases could potentially initiate frailty via any point on the hypothesized cycle (Fig. 1). ??? コホート研究自体からでは、関連していることまでしかわからない。 先行研究から、疾患がフレイルを引き起こしているという仮説を示しているが、疾患以外の生理的変化が引き起こしている可能性もある。 --- ## Critical reading * 5つの基準をどのように選んだかは、この論文からだけではわからない。 * フレイル、障害、重複疾患の関連について考察しているが、因果関係は仮説に過ぎない。 * Table 7 の読み取りがおかしい。また、Table 7 は、ウェブ版はレイアウトが崩れている。